<第1回>電線業界の現状、アルミケーブルとは
こんにちは!商品企画課の千葉です。
毎月、新商品の施工に役立つ情報をご紹介しています。
今回からは全2回にわたって“アルミケーブル”について取り上げます。
銅価格の乱高下や人手不足による工事遅延など、さまざまな課題がある中で、少しでも参考になれば嬉しく思います。
早速ですが第1回は、電線・ケーブル業界の概要や、銅の代替品として期待されるアルミケーブルについて詳しく見ていきましょう。
1.電線・ケーブル業界について
1-1.電線・ケーブル業界の概要
電線・ケーブル業界は、電力供給、情報通信、自動車、建設などの基盤を支える重要な産業です。
主に銅やアルミニウムを導体とした電力用電線、光ファイバーケーブル、EV(電気自動車)用ワイヤーハーネスなどが挙げられ、近年は脱炭素社会の進展に伴い、高付加価値製品の需要が拡大しています。日本市場では成熟型で安定していますが、原材料(銅・アルミニウム)の価格変動、地政学リスク、環境規制強化(CO2削減)、人手不足など依然として多くの課題を抱えています。
1-2.日本市場の動向
日本市場は成熟段階にあり安定しているものの、銅の出荷量は横ばいから微減の傾向が続いており、数量面での成長は限定的で大幅な伸びは見込みにくい状況です。
2025年度予測では、合計585千トン(前年-1.8%)と微減予測。2025年度の改訂で当初予測から下方修正しており、自動車生産減や建築工事遅れが続く可能性が高いとされています。
各セグメント別出荷量では、「建設・電販分野」が銅電線出荷量の約50%を占める最大のセグメントで、建築物・住宅・商業施設向けの配線材(低高圧電力ケーブル、制御ケーブル)がこの分野となります。設備投資、都市再開発、物流倉庫関連など、需要は底堅いですが、労働人口の減少や労働環境改善対応、資材高騰などの影響により工事消化に制約があり、前年度比-2.5%予測となっています。
「電力分野」では、施工人員不足による工事制約の課題はありますが、電力会社での設備更新に加えてデータセンター、半導体工場への供給需要が見込まれ、前年度比+4.1%になっています。
その他、「内需分野」ではモーター向け関連輸出や、再生可能エネルギー(太陽光・風力)関連など需要増加が予測されています。
短期では微減が続くものの、中長期(2027年以降)では、回復・成長の可能性があります。
成長ドライバーとして、①インフラ老朽化対策 ②スマートシティ・IoT化が挙げられます。これらは主に「電力分野(銅・アルミ電線)」と「通信分野(光ファイバーケーブル)」を押し上げ、量減少を緩和する高付加価値需要を生み出します。
①インフラ老朽化対策では、日本の電力インフラ(送配電網)は高度経済成長期に集中建設させたため、一斉老朽化が進んでおり、政府の「骨太の方針」で防災・耐震化が推進され、更新需要が増えることに期待できます。
②スマートシティ・IoT化は、Beyond5GやDX、AI/IoTセンサー普及を背景に、デジタルインフラの高度化を進み通信・電力ケーブルの新需要を生み出します。
このように国内需要の構造変化(量→質)を象徴し、電線・ケーブル業界の持続可能性を向上させます。
1-3.国内銅建値について
国内銅建値は、銅原料・製品の相対取引の目安価格で、「JX金属株式会社」が発表しています。電線・ケーブル業界をはじめ、伸銅品、電子部品などの価格に直接影響を与え、銅スクラップ買取価格の基準にもなります。
▼全体の傾向
2015-2020年:変動しながらも比較的低位安定。中国経済減速、コロナの影響で下落圧力
2021-2022年:コロナからの世界需要増、インフレ、供給制約で過去最高水準
2023-2024年:円安進行と脱炭素・EV需要が支えとなり高値圏維持
2025年:AI/データセンター拡大、供給懸念により過去最高高値更新(1,900千円/トン)
全体として、2021年以降の上昇トレンドが顕著で、2015年度の平均676千円/トンから2024年度は約2倍超に高騰しています。変動性が高く、電線業界ではコスト転嫁や在庫管理が課題となっています。
2026年の銅価格は高値推移する可能性が高いです。要因として①銅供給不足の深刻化 ②銅プレミアムの大幅値上げが影響します。
①銅供給不足は、2025年から2027年にかけてさらに深刻化する可能性があります。特に、インドネシアのグラスバーグ鉱山の災害やチリの鉱山での操業停止が銅鉱石の供給懸念となっております。
②国内銅製錬最大手のパンパシフィック・カッパー(PPC)は、2026年国内需要化向け銅地金プレミアム交渉で25年88ドルから過去最高330ドルの大幅値上げを提示しました。原材料コストが上昇することで、電線・ケーブル業界だけでなく、デベロッパー・不動産会社、専門工事業者や建設会社、そして一般消費者(施主・購入者)にも影響を及びます。
銅価格の高値が続く中で、電設・ケーブル業界ではアルミニウムを導体とした「アルミケーブル」が代替として注目されています。特に、コスト削減・盗難防止の観点から採用が拡大しております。
2.銅の代替品として期待される「アルミケーブル」
2-1.アルミケーブルとは
アルミケーブルは、アルミニウムを主導体とした電線・ケーブルで、銅ケーブルと同様に電力伝送・配電、通信、自動車、機器用になど使用されています。
▼特性
・軽量性:ケーブル質量が銅に比べ50%~70%となり、施工の省力化、運搬作業の軽減に期待できる
・コスト:アルミ相場は銅相場と比べ市場価格が約3分の1程度安い
・導電率:銅導電率の約60%とされており、同じ断面積の銅に比べて電気が通しにくい
・耐食性:表面に緻密で安定した酸化被膜を自然に形成し、長期使用でも優れた防食効果を維持
2-2.使用場所・用途について

・太陽光発電所(メガソーラー・産業用)
交流側(AC)配線、パワーコンディショナから集電盤・変圧器までの接続、地中送電線
※直流側は電気設備技術基準で銅指定のため使用不可。青い外装シースで銅との識別を明確にしており、「青=アルミ」という認識が業界に広がり、 太陽光発電所での防犯対策として高く評価されています
・架空送電線
発電所から変電所や都市部への送電など、長距離の電力伝送として使用 主にACSRタイプが採用されており、中心の銅芯で強度を確保しながらアルミで銅電性を発揮、また軽量のため鉄塔の負担を減らし、設備コストを抑えることができます。
・工場、倉庫、ビル、商業施設
幹線配線(CVケーブル代替)、ラック敷設、立ち上がり部 銅よりも軽量で作業性向上、建設コスト(材料費・人件費)を抑えることができます。
今回は以上となります。
次回は「アルミケーブル」の仕様や施工方法についてより深くご紹介させていただきます。
最後までご覧いただきありがとうございました。また次回の更新でお会いしましょう!








